ノストラダムスの予言集

以前から、ひとつの怪し気な預言集が注目を集めてきました。 題名は「ミカエル・ノストラダムスの預言集」といいます。 南フランスに生まれた医師であり占星術師であったと言われているミカエル・ノストラダムスが書いた942篇の4行詩集です。

ミカエルとは黙次録にでてくる赤いドラゴンという大悪魔をやっつける大天使、 ノストラダムスとはフランス語で聖母マリアのことです。 なんと有り難い名前でしょうか。

しかしながら、この詩集には地震、戦争、疫病、クーデター、不倫などありとあらゆる不幸な出来事が書かれており、 そしてその詩句は極めて難解で出来事の時期と場所を特定するのが困難なようになっております。

そのなかに皆さんもよくご存知の1999年の詩があります。 そして、この詩によると1999年に最後の審判が下り、 人類は滅亡するという風説がまことしやかに述べられてきました。

しかしながら、この詩にはどこにもそのような表現は見当たりません。

   1999年の7の月

   驚くべき偉大な王がやってくるだろう

   アンゴルモアの偉大な王がやってくる前に

   その前後、火星は幸福の名において支配するだろう
死や戦争、疫病といった不吉な単語が見当たらないこの詩はこの不吉な詩集の中ではむしろおだやかな詩ということができましょう。 にもかかわらず、この詩が最後の審判に結び付けられてしまうのは、 今までお話ししてきたように欧米のキリスト教徒の中に第2ミリエールの終わりとともに自分達が世界の指導者たる地位を失うのではないかという潜在的な不安が潜んでいるからに他なりません。 この不安が書かれてもいない内容を読み取らせてしまうのです。

まだ、1999年には4年ありますが、これからますます欧米人の不安は募っていくことでしょう。 いまや、あの超大国ソ連は存在しません。 アメリカ合衆国も巨額の貿易赤字と財政赤字を抱え、その将来にいくばくかの影が差してきました。 西ヨーロッパ諸国のみならずソ連の崩壊やアメリカの不調によって、 欧米の人々はますます焦ってくるに違いありません。

第3ミリエールにはヨーロッパ文明は滅びてしまうのではないかというような不安は世界の中に敵を見つけ異端審問と魔女狩りに向かわせます。 アメリカや国連が地域紛争に積極的に軍事介入しようとしているのは、 冷戦終結後の軍需産業の不況対策という面もありますが、 根本に世紀末に対する漠然とした不安が背景にあるからに違いありません。

しかしながら、聖書はもとよりノストラダムスの預言集にもそのような記述はどこにもないのです。 そもそも正しいキリスト教徒なら最後の審判を怖がるはずはありません。 最後の審判の時にこそ救われるのですから。

このような不安、このような俗説が広がるのは結局、 人々が正しい宗教から離れていったからではないでしょうか。 ノストラダムスもこのような現代の状況を予知して警鐘を鳴らすためにこの預言集を書いたのかもしれませんね。


事典エイト - 新興宗教への警告 - 第1章 現代宗教の流れ