事典エイト - 新興宗教への警告 - 第5章 共産主義の幻想

何を共有すべきなのか

 結局、一番はじめの心と心を触れ合わせてお互いを心の底から理解しあうこ となくして、物やお金だけを平等に分配しても意味がないのです。大きな商売 をしたいと思う人は多額の資金を必要とするでしょうし、効率的な農業をやり たい人は広い土地を必要とするでしょう。

人はそれぞれ好みや能力が違います し得手不得手もあります。地方によって実情はかなり違うでしょうし、その人 の家系の歴史といったものまで考えにいれなければなりません。前にもお話し したように潜在意識においてつながっていても、それぞれの人の顕在意識や肉 体においては人はそれぞれ異なっているのです。

 ところが、共産主義はある程度の配慮はされるものの基本的にはすべての人 を同列にみなして処理します。子供の頃の成績によって職業までも規定された り、すべての農民を村ごと共同農場の組合員としてしまったりするのです。そ こには、個々の人に対する思いやりの心はありませんし、人と人との心の触れ 合いもあまりありません。

各自がそれぞれのノルマをこなしさえすれば良い、 というようになりがちです。上からの共同化によっていろんな性向の人が無差 別にひとつの農場に入れられたりしますから、むしろ農場内の空気はとげとげ しくなりがちです。

 最初に申し上げたように、お互いに気心の知れた同じ宗派の人達が集まって 作った共同農場や修道院、お寺といったものは構成員の間にひとつの価値観が 作られていて、お互いに心が通じあっているからうまくいくのです。

その方法 論だけを無理やりに国家レベルまで拡大しても心がかよいあっていなければ全 く駄目なのです。ソ連や中国をはじめ共産主義政権下では既存の宗教は弾圧さ れました。それは、上からの共産化をする時にはすでに共産主義的な仕組みを 持っている団体や組織が邪魔になるからです。

彼ら宗教家は上からの共産化に は心がないことを見抜いていますから反抗し、自分達だけで団結しようとしま す。これが共産主義政権にとっては許し難い反共産主義的行為に映るのです。

 また、オーム真理教のようなカルト教団も出家者には全財産を供出させて、 共同生活を送ることが多いようです。これも、形の上では平等な共産主義的教 団組織のように見えますが、オーム真理教で明らかになったように、教団の主 催者と一部の特権的な幹部連中の思うように信者を操るテクニックでしかあり ません。これは、旧ソ連のスターリン支配を単にスケールダウンしているにす ぎないのです。

 ユネスコ憲章のなかには「心の中に平和の砦を築く」ことの大切さがうたわ れています。これは言い換えると「心と心を結び付けて平和な世界を作る」と いうことなのです。決して「平和のための制度を作る」ことでもなければ、 「平和のための組織を作る」ことでもないのです。制度や組織は物やエネルギ ーと密接に結び付きます。そして、物やエネルギーは心と心を結び付けるため の障害になりやすいものなのです。

もちろん、物やエネルギーなしではわれわ れは生きてはいけませんし、人類の文明も成り立ちません。しかし、その物や エネルギーこそが戦争の誘因となり、人を殺し、国を滅ぼし、文明を破壊して しまうのです。心の絆を保ちながらこれらの問題をどのように処理していくか を考えることが重要なのです。キリスト教の原罪という考え方もこの辺の事情 を比喩的に示しているのでしょう。


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