現代は白い馬の時代

 現在の状況を見ますと、科学技術の進歩が速すぎて、安全対策や人間社会の 体制が科学技術の進歩に追いついていないというのが実情のようです。何を人 類は急いでいるのでしょうか。やはりキリスト教世界における「1999年の 呪い」が全世界に悪影響を与えているのでしょうか。あるいは、人々が宗教心 をなくして欲望のままに行動するようになったからでしょうか。

 「神は死んだ」と言ったのはニーチェですが、われわれはどうやら宗教や神 様、仏様を誤解しているのではないでしょうか。私はこのような仮定のもとに 旧来の教団や宗派の解釈にとらわれずに聖書や仏典やその他の宗教的な書物を 読んできました。その結果わかったことは、私には意味不明の箇所が多く、ま た承服できない部分も多いものの、世界的な宗教の聖典には同じ考え方の部分 も多く、さらに現代科学から見ても納得できる部分も多いということです。

 例えば、数多くの宗教で行なわれているお祈りや儀式の方法は、人間の精神 をリラックスさせたり、逆に高揚させたりするための生理学的、心理学的なテ クニックをさまざまな形で活用しております。また、それぞれの宗教における 戒律も人間の精神と肉体にとって有用なものが多いようです。

さらに、キリス ト教においては羊を重視しますが、これは単に古代パレスチナの人たちがおも に飼っていたというだけではなくて、羊は寒さや乾燥に強く、粗食によく耐え、 過放牧になっても山羊のように潅木の葉まで食べるようなことはしないといっ た優れた特性を多く持っているのです。

山羊のように潅木の葉まで食べてしま うと木は枯れ、土地は砂漠化してしまって元に戻らなくなってしまいます。古 代の人はこのことを経験的に知っていて山羊をおとしめ羊を崇拝する神話を作 っていったのではないでしょうか。

 さらに、「ヨハネの黙示録」のような神秘的な文書の中にもよく読むと科学 的に理解できるのではないかと思われる部分もあるのです。そもそも黙示録の テーマは「神の子羊が神様から与えられた書物の中の7つの封印を解く」とい うものですが、7つの封印を解くということは結局、宇宙あるいは神の秘密を 7段階の順を追ってひとつずつ解き明かしていくことに他なりません。そして、 これは科学あるいは学問の進歩を意味しているのではないでしょうか。

 では現在のわれわれはどの段階にいるのでしょうか。私は現代は第1の秘密 が解かれて白い馬が現れてくる時代ではないかと思っております。では第1の 秘密とは何でしょうか。それは、電磁気力につての秘密ではないでしょうか。 19世紀頃から電気についての研究が大幅に進みまして、20世紀の後半にな ると人類は電磁気力をある程度自由に使えるようになってきました。そして、 今やエレクトロニクスなしではわれわれの生活が成り立たなくなっております。 テレビやCD、コンピュータなども全てこのエレクトロニクスの賜物なのです。

 現代の物理学者は力には4種類あると言っております。それは電磁気力、核 力、重力、弱い相互作用の力の4種類です。核力とは原爆や原子力発電に利用 されている力のことで赤い馬というイメージによく合います。また、重力はい わゆるニュートンが発見した万有引力のことですが、大地の色が黒いというこ とを考えますと黒い馬のイメージと矛盾しません。ただ、弱い相互作用の力と 青い馬というイメージの関連性が判然としませんが、いずれ科学が進めばわか るようになるのでしょう。

 ともかく重要なのは、われわれ人類は非常な進歩をとげて宇宙の秘密のほと んどを解き明かしてしまったかのように錯覚しがちですが、決してそうではな くて、宇宙の秘密のほんの少しの部分を理解できるようになったに過ぎないの です。まだ核融合の技術も実用化されていませんし、重力をコントロールする などSFの世界の話でしかありません。

それなのに「最後の審判は近い」と不 安がってみたり、「科学によって宗教は滅ぼされてしまった」と考えるのは何 と愚かなことでしょうか。これからも、われわれ人類は科学と宗教を車の両輪 としながら中道を歩まなければならないのです。


事典エイト - 新興宗教への警告 - 第7章 科学技術の進歩と限界