気功と不老長寿

 中国では気功や太極拳が健康法や慢性病の予防法として人気を集めておりま す。その影響で日本でも気功はNHKの教育テレビで取り上げられるまでにな ってきました。しかし、実際に病気を直す気功師さんの実力にはかなりの差が あるように思われます。ガンや白血病のような難病までも直してしまうという 話はよく聞きますが、誰でもがそのレベルに到達できるのであればガンや白血 病は克服された病気ということになってしまいます。けれども、ガンは今なお 日本における死亡原因のベスト3に入っております。

   では、気功師さんの能力の違いはどこから来ているのでしょうか。気功の中 味についてはまだ科学的には明らかになっておりません。従って推測するしか ないのですが、私は診断能力の違いとパワーの違いを感じております。病気治 療の根本は正しい診断です。西洋医学では問診や生化学検査にレントゲン撮影 や超音波映像装置を併用しています。そして、ガンなどでは組織を切り取って 病理検査をすることも多いようです。

それに対して東洋医学では触診を多用す るとともに気脈の流れを見ようとするようです。気脈の流れを正して人体自身 の治癒能力を最大限に活用していこうというのが東洋医学の考え方です。です から気脈の流れを刺激するためにつぼに針をうったりお灸をすえたりするので す。気脈の流れを改善するので体全体に活性が高まって複合疾患にも効果があ るのが東洋医学の特徴です。

 気功治療においては針や灸のかわりに気功師さんが出す「気」によって治療 しているようです。「気」とは何者なのかは科学的には明らかではありません が、患者さんの肌に温感や清涼感を与えたりできるようです。ですから、患者 さんの気脈の流れを読み取ることが最重要課題となります。

しかし、気脈とは そもそも目に見えないものですから、気脈を読み取るという行為そのものが一 種の超能力や神通力のように思われます。だから、誰でもできるというわけに はいかないのでしょう。普通の気功師さんは東洋医学の書物や自分自身の経験 から、この症状にはこのあたりに気を当てればいいといったことを決めている ようです。それに対して、名気功師と言われる人はまるで気脈が見えているか のように患者さんの体を見たり触ったりして診断し、即座に治療しているよう です。

 また、パワーの強さも治療成績に大きく関係しているように思われます。は じめ治療効果のあがっていた気功師さんが次第にその成績を落としていくこと がありますが、治療にパワーを使いすぎてパワー不足に陥っているのでしょう。 昔から中国には不老長寿を求める思想がありました。それらが仙道や道教とし てまとめられていったのですが、それらの思想が宗教色を強めていったのは結 局、宗教的な技術や教義なしではある程度以上の気が出せない、すなわち不老 長寿にはなれないからではないでしょうか。


事典エイト - 新興宗教への警告 - 第7章 科学技術の進歩と限界