クリントン政権のイラク空爆

今世紀最後の冬季オリンピック、長野五輪が開幕した。ところが、こともあろうに、 アメリカのクリントン政権はイラク空爆を準備している。すでに、昨年の段階で、 国連総会はオリンピック期間中の停戦を求める決議を満場一致で採択している。 また、橋本首相もアメリカに対して長野五輪開催中のイラク空爆の自粛を求めた。 その結果、どうやらオリンピック期間中の空爆は避けられた模様だ。

国際的に見ても、ロシア、中国、フランスが空爆に反対してアメリカと対立しており、 国連の安全保障理事会は、 この問題に関しては何の決議を採択することができず、機能停止に陥っている。 アメリカを積極的に支持しているのはイギリスのみで、 ドイツは基地提供を承認したものの、 イタリアではロープウエーをアメリカ軍機が切断したために、 訓練飛行の中止を余儀なくされている。 サウジアラビアもイラク空爆に対する自国の空軍基地の使用を拒否した。

しかし、何故アメリカはイラク空爆を急ぐのだろうか。 たしかにクリントン政権は苦境にある。 次々とでてくるクリントン氏本人に対するセクハラ疑惑、違法な選挙運動疑惑、 クリントン氏の友人の逮捕と、共和党主導の議会とマスコミのもと、 クリントン政権に対する攻撃はとどまるところをしらない。

しかしながら、アメリカ経済は依然、絶好調であり、不倫疑惑にもかかわらず、 クリントン大統領の支持率は高い。イラク空爆を強行することによって、 国民の目を外に向けてなければいけないほど、追い込まれているわけではない。

では何故アメリカはイラク空爆をしたいのか。それは、アメリカが本質的には、 軍事国家だからである。以前にも述べたように、アメリカ合衆国は、 旧ソ連と同様に、大規模で最新鋭の軍事力を持つことを前提として、 国家が成り立っている。 そして、そのような軍事国家は定期的に戦争をすることを欲するのだ。 何故、彼らが戦争を欲するのかと言えば、軍事技術や軍の士気の維持、向上と、 国内世論が平和志向に向かうのを防ぐために最も手っ取り早い方法が、 小規模で確実に勝利を挙げられる戦争を遂行することだからだ。

旧ソ連が崩壊した今、アメリカの仮想敵国は、 イラク、北朝鮮、キューバ、中国の4か国だけとなった。 この中で中国は相手として強力すぎるし、 キューバには実はアメリカ資本がかなり入っているので、戦争による被害が心配だ。 北朝鮮を攻撃することは中国を刺激するし、北朝鮮を勢力下に置くことのメリットが、 現時点では少ない。

一方、イラクは敵としてはちょうど手ごろな軍事力であり、イラクを叩くことで、 産油地帯である中東地域でのアメリカの影響力を増大させることが可能である。 また、砂漠地帯では敵の動きが上空から監視しやすいという軍事上のメリットもある。

しかし、前回にも述べたように、アメリカは所詮、比較超大国にすぎない。 その程度の国家にしては、本国から遠く離れた地域での戦闘行動が多すぎる。 イラク空爆がベトナムやソマリアの二の舞になることはないだろう。 しかし、軍事国家はいつか他の軍事国家の挑戦を受けることになるということを、 アメリカはわかってはいない。つまらない戦闘を繰り返すことが、 じつは軍事国家に とっての最も陥りやすい罠であることは、 優れた歴史家であれば理解できるはずなのだが。


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