中国の政権交代

私の知る限り「中国で政権が交代した」と明確に報道したマスコミは皆無であるが、
トウ小平氏の健康状態が悪化して、指導力を失ったことからトウ小平政権は事実上
崩壊したと思われる。その結果、この春頃から政府や党、さらに政府系企業の有力
者に対する腐敗摘発が進んでいる。これはトウ小平政権時代に甘い汁を吸っていた
有力者をねらい打ちにしたものであり、江沢民総書記を中心とする新政権側の基盤
強化の意味あいが強い。特に北京市副市長の自殺などは北京を勢力範囲とする李鵬
首相にとっても大きな打撃となっている。一方、江沢民総書記の地元上海に対して
は政府が地元企業への援助を決めるなど物心両面での配慮をすることで、権力基盤
を固めつつある。

しかし、江沢民政権内にはいまだにトウ小平氏子飼いの人物も多く存在し、路線的
に見ても北京を中心とする中央集権を重視し、経済の開放政策にも批判的なグルー
プと、広東を中心とする地方の権限の強化を求め、いっそうの自由経済体制の推進
を求めるグループが存在する。上海を地盤とする江沢民総書記は、個人的には内務
官僚的であると言われているが、地元上海からの自由化要求を拒否することもでき
ず、結局、両者のバランスをとりながら政権運営を進めていくことになろう。

このような情勢に対して、アメリカは台湾の李総統の訪米という牽制球を投げてき
た。江政権が開放経済政策を転換するのならば、アメリカは台湾との関係をより重
視する政策に変更するぞという脅しである。それに対して、江政権は強硬な反対を
表明し、核実験の再開で応じた。

このようにトウ小平氏の病状悪化とともに、東アジア地域でも紛争を求める勢力の
活発な動きにより、若干の緊張状態に陥っている。北朝鮮問題ではアメリカは柔軟
な対応を見せて、韓国の原子炉を北朝鮮に設置することで交渉は進展しつつある。
しかし、平和的な部分からその地域に進出し、内部で紛争を煽るというのが軍需産
業一派の常套手段であり、その平和的な部分の中身が原子炉という点を考慮すると
決して危険が去ったとは言えない情勢である。


事典エイト

今月の国際情勢