第2次朝鮮戦争の可能性

最近、中国軍筋から北朝鮮軍が南北国境地帯に移動しつつあるという情報が 流れている。この件についてはCIAも確認しているが、「ここ10年では最も 大規模な移動だが、すぐに何らかの軍事行動に結びつくほどの規模ではない」と している。

今、北朝鮮は未曾有の大飢饉なのだ。今秋の大水害で、ただでさえ外貨不足による 石油不足などで、食糧生産量の減少が危惧されていたところへ、痛烈なアッパーカット を食らったような形になっているという。一部では、木の根を食べているという。 12月の段階でこの調子では、この冬を越すことは無理である。 ユニセフその他、関係機関は緊急食糧援助を実施しているが、各国政府の経済状態も 芳しくなく、予定の数量さえ確保できない状況だという。

一方で、韓国政治の不安定化がある。金泳三大統領は、どういう政治判断か定かでは ないが、ここへきて朴元大統領暗殺後の粛軍クーデーターの主犯として、全元大統領 を逮捕した。また、収賄容疑で逮捕されていたノテウ前大統領も、この件で追起訴 された。これに対して、与党内の一部の政治家には反発する空気が強く、結局、 金大統領は内閣改造でこれを乗り切ろうとしている。

だから、この隙をねらって北朝鮮軍が韓国に侵攻するのだ、と一部のマスコミは 言いたげである。しかし、これはあまりにも荒唐無稽な話だ。可能性は限りなく ゼロに近い。まず、朝鮮戦争当時と比べて北と南の軍事力は完全に逆転してしまって いる。当時は韓国には警察に毛のはえた程度の軍隊しかなく、アメリカ軍も撤退 してしまっていた。一方、北朝鮮軍は日中戦争を戦い抜いた強者ぞろいだった。

しかし、今や韓国軍の装備はアメリカ軍並に近代化し、そのアメリカ軍も韓国に 駐留している。また、いざとなれば沖縄の海兵隊がいつでも出兵できる手はずに なっている。一方、北朝鮮軍はというと、旧式の兵器が主体の歩兵部隊しか持たず、 以前、報道された中距離ミサイルも現代の技術水準からははるかに遅れたもの である。唯一、核兵器だけが南にとっての脅威となりうるが、1発や2発の核兵器 を持っているというだけで、南に侵攻するほど北朝鮮の指導者も馬鹿ではあるまい。

では、今回の北朝鮮軍の移動の目的は何か。おそらくは、飢饉に苦しむ人たちが 暴徒化して南へ集団脱走するのを、軍事力で防ごうという狙いであろう。今秋の 大水害の時は兵士の水死体が韓国に流れて来たことがあった。これで、世界は 北朝鮮の水害のひどさを知ったわけであるが、北朝鮮政府としては大失態であった。 そこで、飢餓で苦しむ人たちが南へ逃げられないようにしているのであろう。

ただし、もし、北朝鮮指導部が自分たちや北朝鮮という国が滅んでも、 朝鮮半島を混乱に陥れ、共産主義退潮の世界の流れを変えようと思ったときは別である。 そのときは、飢餓民にまじった兵士が南へ入り込んで、テロ活動を行い、朝鮮半島は 大混乱になるであろう。今、このようなことが起こる可能性は極めて小さいが、 いつの日にか、現実となることを大いに恐れる。


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